北斗の拳、花の慶次・・・
いうまでもない、週間少年ジャンプに連載され、独特の世界観や絵のタッチで一世を風靡した漫画である.このころは、ドラゴンボールやキン肉マン、Drスランプ、巻末の読者コーナー「ジャンプ放送局」など、まさに週間少年ジャンプの黄金期ともいえる時期であり、そんな中でもこれらの漫画はひときわ目立っていた.今読み返してみてもおもしろく、コミックス全巻を集めようかと思ったほどである.
そこで、これらの作品を緻密(?)に考察してみた.
- 「北斗の拳」
- 「世紀末救世伝説」核の炎に包まれた世紀末を舞台に、なぜか一子相伝の拳法の伝承をかけて争う漫画.「おまえはもう死んでいる」や「あたたたた・・・」などの流行語を生み出した.
- 妙なデフォルメ1
- デフォルメはアクション等を強調するためによく使われるが、この作品には「どう考えてもおかしい」としか言い様のないところがある.たとえば「ピレニィプリズン」に何百年も閉じこめられていた(注:実刑が何百年であり実質閉じこめられていたのは数十年であろう.)羅漢仁王拳の使い手「デビル=リバース」.東京ドームの倍はあろうかと思われるほど大きな牢獄に閉じこめられている.しかも顔の大きさがケンシロウの背丈よりも大きいのである.これはおかしいで〜と思わずつっこんでしまった.さらに思ったことは、「食い物は・・・?」
- 妙なデフォルメ2
- ラオウ・・・ケンシロウの兄であり、北斗神拳伝承者を争うライバル.彼の馬「黒王」はどうだ.なんとあの馬は蹄で三人もの人間を踏むことができるのである.ということはあの馬の蹄の大きさは直径1メートル以上無いといけないことになる.そうするとふつうの馬と比較していくと・・・ラオウはケンシロウより10倍ほど大きい人なのである.でも並ぶと・・・?
- 妙なデフォルメ3
- 数え上げればきりが無いのでもう一つだけ・・・.五車星の一人「山のフドウ」である.彼の腹は30人もの子供のためにトランポリンとして提供された.畳三畳分ほどの面積があるということである.そして指先にちょこんと乗った鶏の卵・・・.彼にとっては鶏の卵など、蟻の卵程度のものであるらしい.でもケンシロウと並ぶと、ほとんど背の高さは一緒・・・
- 玉座付き車
- サウザーの乗り物である.背の低い三輪トラックに玉座が乗っているだけという、まさに特注品である.でも、あれは恥ずかしい.「深く美しきアジア」という漫画にでていた「プール付きリムジン」に匹敵するほどの恥ずかしさである.設計したやつの気がしれん.だいたい乗り心地悪そうじゃないか・・・ってそんな問題では・・・
- 中世化
- 「199X年地球は核の炎に包まれた・・・」という有名な冒頭から考えるに、近未来という設定であることがわかる.秘孔を突かれて破裂した死体をみて「高性能小型爆弾か?」と疑うシーンやバギータイプの車などがでてきていることでもうなずける.でも時がたつにつれて・・・.知らぬ間に中世的な風潮が混じっていくのである.登場キャラが当たり前のように拳法を使うのはまあ許そう.でも、なぜマントを羽織る!何だあのトキの格好は!しかもラオウの言葉遣いが・・・.サウザーの作ったのは「聖帝十字陵」というピラミッド.しかも頂上は人柱.何だこりゃ中世的な儀式じゃないか.
- 天
- 師匠のリュウケンに「拳をなにに使う?」と問われたときにラオウが答えた言葉である.どうも意味が通らんのだが・・・.でもリュウケンは意味が分かったみたいだし・・・.まあ、いいか.
- 「花の慶次」
- 原作は故隆慶一郎.かぶきもの「前田慶次」が戦国を舞台に暴れ回る.戦国時代は日本で最も人気のある時代であり、多くの名著が生まれた.そのなかでも隆慶一郎は独特の世界観があり、根強いファンも多い.内容は、「前田慶次がいなかったら戦国時代は収束しなかった」みたいな書き方がされているが・・・
- やはりデフォルメ1
- 運命なのか・・・.まずは馬・松風.ラオウの馬に勝るとも劣らぬくらい大きい.何人の人間を踏めることか・・・.当時(1600年頃)の馬というのはラバに毛の生えた程度のもので、走る速度も人間より少し速いくらいだった.それなのにあんな馬が・・・.おかしい.
- やはりデフォルメ2
- 前田慶次の槍.一回振るだけで10人近くの胴がまっぷたつになるという優れもの.どう考えても長さは15mくらいあるとしか思えない.中国三国志の張飛の持っていた矛が丈八(一丈八尺=5mくらい?)であるのを考えると・・・.いろんな意味で感嘆を禁じ得ない.
- やはりデフォルメ3
- これが一番おかしい!デフォルメ界にうち立てた金字塔.それが「千利休」である.初めてみたときにあれほど驚いたものはない.息子の前に入道雲のように立ちはだかり、恐るべき威圧感を感じさせる.でもなぜあそこまで大きくする必要があったのだろうか.息子が正座している千利休の膝の高さほどしかないじゃないか.なにもそこまで・・・.美術系友人に「パース狂ってるで」という名言を残させた、デフォルメ技術の最高峰であるといっても差し支えないであろう.
- 筋肉ムキムキの秀吉
- 小田原戦役の時、独眼竜正宗との和睦がすんだ後に主要な武将と秀吉が温泉に入る場面がある.そのときの秀吉といったら・・・、気持ち悪いほど筋肉が発達している.歴史小説では槍をとって戦ったなどという描画は一つもなく、どちらかといえば卓絶な政治家としての評価の方が高い秀吉が・・・.小田原戦役後、羽柴秀長の死によって心のたががゆるみ、半ば狂人となって朝鮮戦役を起こす人間と同一人物とはとうてい思えないのだが・・・
「北斗の拳」「花の慶次」は私の中でも特にお気に入りの部類に入る漫画である.「北斗の拳」は少年誌としてはかなり毛色の違った漫画であり、時には残虐な表現も含まれていた.「花の慶次」も同様で、平たくいえば殺し合いの漫画である.しかし両作品とも独特の世界観を醸し出していたし、それ故に内容が残虐でものめり込めた訳である.今回の視点を変えた考察も、もちろんこれらの漫画が好きだからこそいえるわけである.
しかし最近の漫画に、ここまで魅力のあるものが少数であるのは悲しい限りである.
もしここを読んで「これはおかしい」という場面があれば、投稿してほしい.
必ずここに乗せると思うので・・・(たぶん・・・)
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