マルチメディア

 最近しきりと「マルチメディア時代が到来」などと言われているが、これはそんなに騒ぎ立てるほどのことであろうか?確かに情報を伝える「手段」は増えた.従来のメディアに加え、前述のインターネットからネットニュース、CD-ROM出版やE-MAILなど、数え上げたらきりがない.しかし、その質はどうであろうか.重要なのは、「何を伝えるか」であることは言うまでもない.メディアの種類が増えようとこの原則は変わらないはずである.しかし、現在の状況を見てみると、たとえば今までビデオで配布していた物をパソコンで扱える動画にしただけの物や、小説をテキストファイルにしてCD-ROMで出版したりというような物が見受けられる.はっきり言ってこれでは意味がないのである.ビデオで見られる物をわざわざパソコンで見ても仕方がない.これは、LDやDVDが注目されても普及までにいたらなかったことでも解ると思う.また、CD-ROMで小説を出版するのは言語道断である.これは小説の文面をそのままテレビの画面に映しているのに等しい.これを買った人は、たとえば電車などで見るためにモバイルパソコンを持っているのだろうか.それなら本を買った方が安上がりだし、どこへ持っていってもじゃまにならず(モバイルパソコンよりは)、しかもどこでも読むことができる.
 つまり、とにかく新しいメディアを使えばいいわけではないのである.情報の種類や価値その他あらゆる条件から検討され、ビデオなり小説として出版され定着してきたのであり、それをそのままパソコンに持ってきても無意味である.パソコンデータとして情報発信・出版するなら、それにあった形でするべきである.パソコンの特徴は、画像・テキスト・音楽その他あらゆる要素を同時に扱えることである.言うなれば「マルチメディア時代」ではなくて「メディアミックス時代」である.あらゆるコンポーネントを融合し、従来のメディアよりも表現力を増すことができる.もちろん何でも詰め込めばいいわけではなく、その情報がどのメディアをどう使えばもっともよく伝わるかを考える必要はあるが.
 また、インターネットの普及によりもたらされたのは、「情報の双方向性」である.何よりこれが一番重要である.実際企業の中にはホームページに「消費者交流の場」としてBBSや掲示板などを設け、積極的にユーザーの意見を得ようとしているところもある.つまり、これは「インターネット」を「ユーザーの声」という「情報」を得るための「メディア」として用いているということである.ユーザーとしても、つながりにくいサポート電話に何回も電話することなく、ホームページで簡単に解決法やヒントを得られるし、また思わぬ裏話も知ることもできるかもしれない.企業側もユーザーの生の声を聞き、次の製品にそれを反映させることができる.まさに一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなるのである.
 重要なのはパソコンの売り言葉に流されないことである.従来のことがパソコンでできても何も驚くに当たらない.しかしパソコン・インターネットの普及によって得られる「双方向性」というのは何よりも興味深く、もっと注目されてしかるべきであろう.


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